大分流 イノシシの解体法
− 私のグループでの解体法 −


全国のイノシシ解体法には、大きく分けて4タイプあるようだ。

 ・鹿のように皮を剥ぐタイプ
 ・髭剃りのように毛を剃るタイプ
 ・バーナーで毛を焼いて擦り落とすタイプ
 ・熱湯をかけて毛をむしるタイプ

現在の大分県では、最後のお湯をかけ、毟るタイプが主流らしい。これは屠殺場で豚を処理するのと同じ方法である。メリットとしては、皮を食べることができる。熱湯をかけるのでマダニなどの表面の寄生虫を排除できる。毛を洗い流すので精肉の際、肉に付着し辛い。毛根も抜くので毛が伸びる心配がない。(毛根が残っていると、ブロック肉でも毛が育つ)となる。

今回は部位別に分かれるまでを紹介する。
(各部位からの骨抜き、精肉は写真で説明するのが非常に難しいので今回はパス。)


捕獲

まずはイノシシを捕まえないことにはどうしようもない。鉄砲を持っている人は撃って、罠の人は箱やワイヤーで捕まえて欲しい。

←写真は日の入り後、休耕田でボンヤリしている60kg位のイノシシ
日没を過ぎているので銃を使うことができず(使えば違反)涙を流しながら見送った(ノД`)

湯をかける

まず始めに、ボイラーで80℃位の湯を少しずつかけていく。首の方から4つのエリアくらいに分け一気にかけないようにする。冷えると抜け難くなるから意味無いし、作業効率が落ちるからだ。

毛を抜いていく

すぐには抜けないが、暖まれば簡単に抜ける。脂の乗っている個体だととても顕著で、本当にツルリと剥けて気持ちがよい。だが、オスは「ヨロイ」と呼ばれる前肩の部分が異常に堅く、抜けにくいので小量ずつ毛を掴み引き抜く。これは背中の「たてがみ」も同様である。また、抜けないからと言って長時間湯を同じ所にかけると、煮えてしまって返って抜けないので注意が必要である。なお、作業の際は分厚いゴム手袋をしないと火傷は必至なので注意!

道具も使って抜く

草取り鎌の様な引っ掻く道具があると効率はグンと上がる。
私は折り畳みスコップを鍬状にしてすることもある。

完了

産毛をナイフで剃り落とし、きれいに仕上げていく。この時に足は関節から切断する。

首を落とす

アゴ骨の下からグルリと首にナイフを入れる。頭部に肉が付かないよう、できるだけギリギリの位置に刃を入れる。

エクソシスト

脊椎まで切ったら頭を持ち、180度グルリと回転させると関節が外れる。後は軽くナイフで肉や筋を切れば切断完了。外した頭部は希望者は頬肉を取るが、基本的には犬の餌。

(オスで立派な牙の場合は、グループにいる職人がキーホルダーに加工する)
(私も立派な物を作ってもらい、車のキーを付けている。)

腹を割く

喉から尻まで腹側の表面だけを切る。深く切ると内臓を傷つけ大惨事になるので注意!腹膜を切らないように、皮と脂肪だけ撫でるように切る。

オスの場合

オスの場合は腹にへばり付くようにペニスがあるので剥ぎ取る。また、尻側には睾丸があるので、これも股から切り離す。
猟期中は繁殖期なので液体を吹き出す固体もある(´・ω・`)


鉈を入刀

鳩尾から鎖骨?までの部分を鉈で叩き切る。
股の部分も左右に鉈で切り込みを入れる。

内臓摘出

肛門の周囲を切り、胸部を切開する。
横隔膜を切り、腹膜を脊椎側まで手刀で剥ぎ取る。
ここまでできたら、食道・気道を掴み一気に肛門側へ引っぱると内臓がすべて一塊になって取り出すことができる。


作業台へ

中抜きが完了したら腹腔内・外側を綺麗に洗い、作業台へと上げる。
背側を一気に切る。骨が縦にあるので左右に避けて脊椎に当たるまで切れ目を入れる。

三枚下ろし

脊椎と肋骨の接点は軟骨で弱いので、ナイフで何回かなぞると切れ目が入る。左右に切れ目を入れ、肋を開くように押すと簡単に外すことができる。写真ではすでに摘出しているが、腹腔の股間近くに左右二本、ササミのような形状の肉がへばり付く様に着いている。これは内ロース(ヒレ肉)であるので削ぐように剥ぎ取る。
後は脊椎に沿ってナイフを入れ、半身ずつに分ける。
ここは魚を三枚に下ろす感覚に似ている。

骨抜き

半身に分けたら、前肩・アバラ・股の3ブロックに分けて骨を抜く。骨抜きと弾で痛んだ部位を切除したら、各ブロックを人数分に切り袋に詰める。

終了

肉の分配についてはグループごとに違うようだが、私がお世話になっている所では勢子も待ちも止めた人も関係なく、すべて平等に分配する。これは昔、勢子長が若い頃所属していたグループで辛い経験をし、皆に同じ思いをさせたくないとの心遣いである。
ありがたいことだ。


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