ナイフメイキング 後編
− ストック&リムーバル法によるナイフメイキング −



熱処理完了

クロネコの送料着払いで帰ってきた。中身は送った封筒に包まれ、さらに厳重に梱包されてきた。ナイフは折れたり曲がったりすることなく、無事に焼き入れが終わったようだ。発送前に比べて全体が曇ったように酸化膜で覆われている。

ロックウェル硬度

硬度はHRC62。一般的な市販ナイフがHRC56程度ということを考えると、かなりの高硬度である。硬いということは切れ味が良く刃持ちも良いということだ。

HRC(ロックウェル硬度cスケール):先端が0.2mmのダイヤモンドを150kgの圧力で試料に押しつけ、出来た窪みの深さで硬さを示す。この数値が大きいほど硬い。


硬度測定痕

小さな窪みが食い込んだ跡。ヒルトに上手く隠れるように傷が付いている。この辺はさすがナイフのことが解っている業者だ。

ミラーフィニッシュ

酸化膜をペーパーで研磨する。800→1000→1500→2000の順番に徐々に番手を上げる。一定方向に磨き、次の番手は直角に交わるように研磨する。こうすると前の番手の傷が解りやすい。2000まで磨いたら、バフに青棒(研磨剤)を塗りつけ磨き上げる。すると写真のようにピカピカの鏡のようになる。

銀色含有エポキシ接着剤

90分硬化の二液性エポキシ接着剤に銀粉を混ぜる。この銀粉はルアー作成に用いられる物の流用である。

ヒルトの固定

混合した接着剤を本体とヒルトの溝に塗り、本体に刺した後、カシメ線を通し左右から線をハンマーで叩き潰す。上手くカシメられると、カシメ線とヒルトが癒着しカシメた跡は完全に解らなくなる。はみ出た分はガソリンを含ませたウエスで簡単に拭き取れる。なお、ブレードは仕上げまで終わっているので、完成までガムテープで保護しておいた方がよい。

ハンドル材接着

エポキシ接着剤をハンドルとヒルト&本体に塗る。特にヒルトとの間に隙間が出来ないよう、しっかりと充填する。ハンドル材はローズウッド(紫檀)をチョイスした。同じく木目が美しいココボロと迷ったが今回はこれを使ってみる。

12時間養生

当て木をしてクランプでしっかりと固定する。このまま接着剤が完全に硬化するまで放置。

ボール盤での加工

しっかりと接着されているのを確認したらボール盤での加工を始める。鋼材を切り出したときのように周囲に穴を開け、ノコで切る。相手は木であるので面白いように加工が進む。また、ファスナーボルトとソーイングパイプの穴も同時に開ける。

片面完了

ノコで切り出したら少し余裕の残し、ヤスリで大まかに成型する。穴を開けているときから思っていたのだが、この木はとても良い香りがする。

成型完了

反対側も同様に加工し、ボルトとパイプの穴を貫通させる。ボルトは6.0×4.5mmの段差が付いたシュナイダーボルトであるので、4.5mmで開けた穴を6.0mmに拡張する。この際、拡張する深さを正確に測定しておきドリルに印を付け、深く掘りすぎないようにする。通常は段付きドリルを用いる様であるが、一本が3,500円と高価で他に使い回しが出来ないためこの様な手法を取った。

ボルトとパイプの取り付け

穴とボルトにエポキシ接着剤を付けボルトを締め上げる。ソーイングパイプも接着し固定。

最終成形

硬化したのを確認したら鉄鋼ヤスリで成型を行う。ヒルトの形に合うようにボルト諸共削っていく。時折、握って手に合うように少しずつ削る。微細な削りカスが出るので掃除機で吸い取りながら作業すると良い。

成形完了

これでほとんどの作業が終了した。

ファスナーパイプの面取り

パイプの断面がギザギザなのでリーマで面取りを行う。

リンシードオイル

銃床の仕上げにも使われるアマニ油である。乾性油であるので空気に触れ時間が経つと硬化し、耐候性・耐水性が向上しグリップを保護する。ただ、天然素材であるので欠点もある。化学塗料に比べ耐候性等が低いのは仕方ないが、臭いがキビシイ。柿渋がう●こ臭い様に、アマニ油は魚の様に生臭い・・・

オイルフィニッシュ

オイルを付けた1500番のペーパーで磨きながらしっかりと木に浸透させる。この後、3日ほど乾燥させ、次からは指でオイルを擦り込む。この乾燥→擦り込みを続けることで重厚な仕上がりになる。生臭いので乾燥は野外に吊り下げて行った。銃床などは数ヶ月に渡って行うようであるが、今回は二週間の作業期間で終了。

ランスキー シャープナーDX

いよいよナイフに命を吹き込む刃付けの作業である。最初は刃の角度を正確に決める必要がある為、ランスキーシャープナーを用いる事にした。通常の水砥石では難しいこの作業も、これなら失敗もなく簡単である。

刃付け

ブレードに傷が付かないよう養生テープを貼り、専用のクランプで挟み込む。そのままバイスで固定して研ぎの開始である。刃の角度は20度に設定。70番から初めて、専用のオイルを付けながら裏表均等に研ぎ、段々番手を高くして最後には皮砥(皮に青棒を塗った物)でバリを取って完成!往復作業のみ行えばよいので、とても楽に正確な角度で刃を付けることが出来る。

完成!!

切れ味を示す方法に、爪に滑らず食い込むとか、丸めたティッシュを一引きでどれぐらい切るとか
産毛がどれぐらい剃れるか等あるが、明らかに私が持っている鍛冶屋が作った刃物と同等もしくはそれ以上の
切れ味がある!コピー紙や新聞紙は熱したナイフでバターを切るようにスーッと溶けるように切れるし
産毛は撫でるだけで剃れる。素晴らしい切れ味である。!初めてのナイフ作成であったが、とても満足できる
一品が出来たと思う。これなら、獲物の解体に自信を持って使うことが出来る。とにかくよい物が出来て良かった。
このナイフメイキングは面白く、結構ハマりそうである!

もどるよ〜